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尖閣諸島問題「火に油注ぐ」誤報相次ぐ(上)「中国が日本側EEZにブイ」
 

尖閣諸島問題「火に油注ぐ」誤報相次ぐ(上)

「中国が日本側EEZにブイ」


楊井 人文
 | 日本報道検証機構代表・弁護士




産経新聞2013年2月22日付朝刊1面に掲載された図

産経新聞2013年2月22日付朝刊1面に掲載された図

産経新聞は2月22日付朝刊1面トップで、中国が尖閣諸島周辺海域で「海上ブイ」を設置しているとの“特報“を掲載した。その中で「設置場所は、排他的経済水域(EEZ)の境界線である『日中中間線』の日本側で、中国による構造物設置は国連海洋法条約と国内法に違反する」とした上で、中国側による尖閣周辺領空・領海侵犯が相次いでいる状況をふまえ「不当な行為がまたひとつ明らかになった」と強調していた。

しかし、産経の特報はその日の午前中のうちに誤報と判明した。

菅義偉官房長官は同日午前の会見で、海上ブイが確認された位置について「東シナ海、地理的には中間線の中国側、中国側300メートルの位置」だと説明。「国際法上特段に問題があるということではない」との見解を示した。小野寺五典防衛相も、設置場所は「日中の中間線の西側、中国側」で「日本の排他的経済水域内ではないと確認した」と説明した。この発表が虚偽だと疑うべき理由はどこにもない。(*1)

海流でブイが動いて日本側に?

ところが、産経は翌23日付朝刊の続報で、明確な訂正を行わなかった。

5面の目立たないところに「海上ブイ 中国に説明要求 官房長官『外交ルートを通じて』」という記事(見出し2段)を掲載し、日本政府がこのブイについて中国側に説明を求めていることを強調。官房長官らが設置場所について「中国側」と説明したことは報じたが、「国際法上特段に問題がない」との発言には載せなかった。代わりに匿名の政府高官に「碇(いかり)で固定されてはいるものの、ブイ自体は数百メートルの範囲で動き得る」と語らせ、これをもって「海流の状況などによってはブイの位置が日中中間線から日本側に入る可能性があることを示唆した」と報じたのだった。

まさか、「ブイ自体は数百メートルの範囲で動き得るから、日本側に入る可能性がある」という論法で、「日本側EEZ内に設置した」と報道と矛盾しなくなるとでも考えたのだろうか。仮に中国側に設置したブイが海流で日本側に入ってきたとしても、「日本側に設置した」のとは全く異なることは、いうまでもないはずだが。(*2)

【誤報レポート】「中国が日本EEZ内にブイ」 実際は中国側(GoHoo、2月23日付)

事実誤認の拡散を放置

もちろん、緊張が高まる日中中間線付近での中国の動向は、とりわけガス田開発問題以来、日本国民の重要な関心事だ。「中国側が尖閣諸島周辺海域で『海上ブイ』を設置した」という事実自体は、政府発表でも間違いではない。これをいち早く報道したことの意義を否定するものではない。他紙もベタ記事ながら、当日夕刊などで追いかけている。「中国側」であっても報じる価値はあったということだ。

そうはいっても、設置された構造物が日中中間線の日本側(日本の排他的経済水域内)か中国側かで、その意味合いは大きく異なる。日中中間線は日本側が主張し、中国側は認めていない境界だが(外務省「東シナ海における資源開発に関する我が国の法的立場」参照)、日本側だったら日中間の外交問題になること必至であった。産経は「日本側」という情報を得たから1面トップで報じたのであろう。

実際は「中国側」と判明した以上、記事全体が誤りだったわけではないにしても、重要な部分に誤りがあったといわざるを得ない。

にもかかわらず、産経は一週間以上たった今も、ニュースサイトに「中国が尖閣周辺にブイ設置 日本のEEZ」という見出しをつけた第一報を掲載したままにしている。

それどころか、27日付の「読者サービス室から」という欄で、事実関係を誤認した読者の声を紹介しているのである。

わが国の排他的経済水域内に中国が潜水艦情報などを収集するブイを設置したことを22日付で報じると「放置すれば設置を容認したことになる。回収・撤去すべきだ」(埼玉県、81歳男性)▽「すぐに撤去を。法整備が必要なら早急にすべきだ」(栃木県の70代男性)などの意見が続いています。

出典:【読者サービス室から】竹島の日、日本政府はひるむ必要ない 90歳女性、NHKに憤慨(MSN産経ニュース2013/2/27 07:37)

情報の信頼性を確認できない出所不明記事

今回の産経の”特報”記事は、情報源を全く表示していないという問題点もある。

冒頭「中国が沖縄県・尖閣諸島の周辺海域に『海上ブイ』を設置したことが21日、分かった。」で始まり、文中どこを読んでも、どのようなルートの情報で判明したのか、全く読者に手がかりを与えていない。日本のメディアが好んで使う「政府関係者によると」といった文言すら出てこない。情報源を明かせないとしても、どのような筋で取った情報なのかを文中で表示することは基本的なルールのはずである。日本経済新聞記者出身の牧野洋氏によると、こうした「出所不詳記事」は、米国では「ゴミ箱行きになる」という(『官報複合体』講談社、2012年刊)。

驚くべきことに、記事の最後に、この問題を所管している海上保安庁に取材した結果について「『担当に事実関係を確認中』と回答した。」で終わっている。まだ裏はとれていません、と自白していたことになる。

尖閣諸島問題「火に油注ぐ」誤報相次ぐ(中)「防衛相が警告射撃の方針表明」

【注】

(*1)  政府の公式発表をそんなに簡単に信用していいのか、何か裏があるのではないか、という勘ぐりの声があるかもしれないので、念のため説明しておく。安倍政権は2月5日、中国艦船によるレーダー照射事案を自ら公表するなど、中国の”不当性”を国際世論にアピールする方針を明確にしている。仮に日本の排他的経済水域内にブイが設置されたことを確認していたのであれば、中国の”不当性”をアピールする新しい証拠となり得る。あえて中国側に有利なように事実をねじ曲げてまでして発表する理由はない。そんなことが発覚したら一大スキャンダルであり、政権が危機に瀕する可能性すらある。そのようなリスクを冒してまでわざわざ情報操作する理由は見当たらない。ちなみに、中国の外交部報道官も、2月26日の会見で「関係部門が中国の管轄海域内に気象観測用に設置したものだ。何ら非難されるべきことはない」と説明している(2013年2月26日中国外交部報道官会見録)。

(*2) 産経の第一報には「ブイには多数のアンテナが備えられており、音や海中データを収集・分析することで海上自衛隊の潜水艦の動向を把握する狙いがある」と書かれている。この点、菅長官は22日の会見で「そこは把握していない。常識的には気象観測などを行うものと推測される。詳細は判明していないので中国側に説明を求めている」と答えている。産経は23日付続報でこの発言も記事にしなかった。ちなみに、読売新聞22日付夕刊は「付近の潮流や水温の情報を収集する目的があるのでは」という防衛省幹部のコメントを紹介している。

楊井 人文

日本報道検証機構代表・弁護士

慶應義塾大学総合政策学部卒業後、産経新聞記者を経て、平成20年、弁護士登録。弁護士法人ベリーベスト法律事務所所属。平成24年4月、マスコミ誤報検証・報道被害救済サイト「GoHoo」を立ち上げ、同年11月、一般社団法人日本報道検証機構を設立。

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